自律する子どもの育て方:学びの羅針盤

先生向け

こんにちは。ときどき校長のサムです。

私たちは今、先の見通せないVUCA(不安定、不確実、複雑、曖昧)の時代を航海する船に乗り合わせています。羅針盤がなければ、船はただ波に揺られるだけでしょう。

この時代を生きる子どもたちに、私たちは何を渡すべきでしょうか。私は、自分自身の力で進むべき方向を見つけられる「学びの羅針盤」こそが、彼らの人生を輝かせる最も大切な道具だと考えています 。


羅針盤が示す「現在地」

まず、私たちは子どもたちの「現在地」を知る必要があります。OECDの調査によると、

生活満足度が低い国(日本はこちらに入ります。)では、「インターネットの利用時間が長い」「学校生活への不安を感じている」という傾向が見られました 。これは、子どもたちが自分の力で進むべき道を見つけられず、不安を感じている状態を示しているのかもしれません。

一方で、満足度が高い国(フィンランド、オランダ等)の子どもたちは、「放課後に友達と会話する」「友人との交流が多い」「多くの身体的活動を行う」といった、人や社会との豊かな繋がりを持っています。

このデータが示すのは、単に知識を教え込むだけでは、子どもたちの心を本当に満たすことはできないということです。羅針盤を手渡すことが、今、私たちに求められています。


「羅針盤」の使い方を教える

では、その羅針盤を子どもたちにどう手渡せばよいのでしょうか。日々の授業で、羅針盤の使い方を実践的に教えていきましょう。

1. 自分で針路を定める
全員が取り組む最低限の課題以外は、生徒自身に選ばせる場面を作る…例えば、「この単元の学習内容はここまで。でも、もっと深く学びたい人は、この応用問題に挑戦してみよう」とか、「自分一人で取り組むのもいいし、隣の人と一緒に考えるのでもいい。」とか、「タブレットを使う」または「教科書や資料集を使う」等、課題別や集団別、学習内容別、学習方法別、多様な方法を準備しておいて、羅針盤の針が指す方向を、自分の意志で決める練習をさせるのです 。

2. 仲間と航路を確かめ合う
羅針盤は常に一人で使うものではありません。仲間と地図を広げ、互いの意見を交わしながら航路を確認することで、より良い道が見えてくることもあります。教室内で意見を交流する時間を設け、学び合い、高め合う授業を創造しましょう 。早くできた子が、分からない子に教える場面も、この学び合いの時間を豊かにします 。

以前勤めていた校区の中学校の生徒たちに行ったアンケート調査で、「最も楽しい時間は何」「もっとやりたい学習は何」という問いに、「友達との学びあい学習、グループ学習」が1位だったことは今でもよく覚えています。子供たちが求めている活動でもあるということです。

3. 現在地を振り返る
学びの途中や終わりに、生徒自身に「どこまで理解できて、どこが不十分か」を自己評価させてみましょう。これは羅針盤の針が示す現在地と目的地を照らし合わせ、進むべき道を調整する力、「メタ認知」を育みます。


羅針盤が示す「目的地」

羅針盤が示す最終的な目的地は、「自律した児童・生徒」です 。それは「自分で考え、判断し、決定し、行動する」力を持つことです。

もし、子どもが困っていたら、こう問いかけてみてください。

「どうしたの?」「どうしたいの?」「何を支援してほしいの?」と疑問形での言葉かけを心がけましょう。

この問いかけは、先生が答えを与える存在ではなく、子どもが自ら考え、歩み始めることを支援する「伴走者」へと役割を変える第一歩です。

子どもたちは羅針盤を手に、自分の意志で、そして時に人の力を借りながら、未来へと航海を続けます。
子どもたちの可能性を信じ、共に未来を拓いていきましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました