――「おかげさま」と「身から出たサビ」の教育
こんにちは。
元校長として40年間、教育の現場に立ってきた「ときどき校長」のSAMです。
子育てや教育について考えていると、
「どう声をかけるか」で迷う場面が、何度も訪れます。
- 失敗したとき、どう言えばいいのか
- うまくいったとき、どう受け止めればいいのか
今日は、そんな問いに静かに答えてくれる
一つのエピソードを紹介したいと思います。(以前私が校長を務めていた学校のHPで投稿したことのある記事です。)
「怪我をさせてしまって…」と謝る先生に、母はこう答えた
これは、
京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授が
中学生の頃の出来事です。
教育実習に来ていた大学生と柔道の練習をしていた際、
山中少年は投げられた拍子に腕を骨折してしまいます。
その夜、慌てた先生から電話がありました。
受話器の向こうで、先生は何度も謝っていたそうです。
そのとき、山中さんのお母さんは、こう答えたといいます。
「先生、気にしないでください。
うちの息子の転び方が悪かったんだと思います。
明日からも、気にせずいろんな子を投げ飛ばしてください。」
このやりとりを見て、
山中少年は「わが親ながら立派だ」と感じたそうです。
失敗は「身から出たサビ」、成功は「おかげさま」
この経験を通して、山中さんは
次のような姿勢を大切にするようになったと語っています。
- 悪いことが起きたときは「身から出たサビ」
- 良いことが起きたときは「おかげさま」
もし、受け身がきちんとできていれば、
怪我は防げたかもしれない。
だから、怪我をしたのも自分の責任。
一方で、うまくいくことは、
自分一人の力ではなく、
周りの人の支えがあってこそ。
とてもシンプルですが、
生きる上で最も大切な土台が、ここにあります。
ここには「評価しない教育」がある
このお母さんの言葉には、
- 子どもを責めない
- 先生を責めない
- でも、出来事から目をそらさない
という姿勢が貫かれています。
誰かを悪者にしない。
点数や結果で判断しない。
ただ、起きたことをそのまま受け止め、
次に生かす。
これは、
アドラー心理学やシュタイナー教育が大切にしてきた
「評価で人を操作しない関わり」と、深く重なります。
学校現場でも、同じことが起きている
校長として多くの子どもを見てきましたが、
伸びていく子どもたちには共通点がありました。
- 失敗しても、人格を否定されない
- うまくいっても、慢心させられない
- 大人が「どう受け止めるか」を見せている
そうした環境で育った子どもは、
他人の評価に振り回されず、
自分の力で立ち上がっていきます。
評価しないとは、放任ではない
「評価しない」と聞くと、
何もしないことだと誤解されがちです。
でも、そうではありません。
- 見ていないわけではない
- 関心がないわけではない
- 期待していないわけでもない
むしろその逆で、
深く信頼しているからこそ、評価で縛らない。
それが、このお母さんの姿勢から伝わってきます。
まとめ:子どもは、大人の“姿勢”から学ぶ
子どもは、
言葉以上に、大人の態度を見ています。
- 誰のせいにするのか
- どう受け止めるのか
- 何を大切にしているのか
「身から出たサビ」と「おかげさま」。
この二つの言葉は、
評価に頼らずに生きるための、
とても力強い教育だと思います。
この記事で紹介した考え方の全体像は、
▶︎ 評価しない教育は、なぜ子どもを伸ばすのか
――アドラー・シュタイナー・学校現場の実践から
で整理しています。