明日からできる!「聞くことの指導」と「勇気づけ」で教室を変える

先生向け

「Iの世界」「Weの世界」を広げ、子どもを輝かせる「チームとしての学校」

皆さん、こんにちは。ときどき校長です。

現場の先生方は、日々の授業や生徒指導に加え、保護者対応や多岐にわたる校務に追われ、まさに「多忙感・バラバラ感」を感じているのではないでしょうか。一人ひとりの先生が「自己完結的な業務の遂行」に陥り、孤立してしまう。これは多くの学校が抱える共通の「頭痛の種」です。

「チーム学校」と言われ始めてしばらく経ちますが、単なるスローガンで終わらせるのではなく、教職員一人ひとりが組織的に連携し、子どもたちの学びと成長を支える「効果のある学校」をつくるための、現実的な道筋をお伝えします。

本記事でご紹介する「I(自分)の世界」や「We(仲間)の世界」といった概念は鳴門教育大学大学院の久我教授による「効果のある学校づくりの理論と実践」として文部科学省のサイトに詳しい資料もありますので、さらに知りたい方はこちらをどうぞ。

「Iの世界」を広げる!非認知能力の育成

子どもたちの心の不安や意欲の低下は、「I(自分)の世界」が縮小しているサインです。

近年注目されるようになった「非認知能力」については、学力テストや数字では表しにくい、子どもが主体的に遊びや経験を通して育む「探求心、行動力、直感、協力」といった力です。どの学校でも取組が進んでいるとは思いますが、イマイチどうしたらいいかわからないとか、確信が持てないという先生も多いのではないでしょうか。

「Iの世界」を広げ、子どもの非認知能力を育むためには、まず「子どもが安心できる環境」を整えることが出発点です。そして、子どもが自分の興味を持って観察したり調べたりする時間を邪魔せず、そっとサポートする。最後に、子どもが何かをやり遂げたり、成功したり、失敗したりする体験を共に感じ、共に学ぶことが大切です。

「自分にはいいところがある」「自分は大切な人間である」という肯定的なセルフイメージが持てるよう、学校だけでなく家庭や地域全体で子どもたちを支える必要があります。

「Weの世界」を広げる!聞くことの指導と勇気づけのボイスシャワー

一方で、いじめや問題行動、学級崩壊といった形で現れるのは、「We(仲間)の世界」の縮小です。

この「Weの世界」を広げるためには、先生同士の連携はもちろん、子ども同士が「お互いを認め合う」関係を築くことが不可欠です。そこで、日々の指導で特に力を入れたいのが、「聞くことの指導」の徹底と先日もお知らせした「勇気づけのボイスシャワー」です。

1. 聞くことの指導の徹底

子ども同士がお互いの話に真剣に耳を傾ける習慣を育むことは、共感力を高め、「Weの世界」を広げる土台となります。

  • 具体的な実践例:
    • ペアワークやグループワークの前に、「相手の目をしっかり見て、最後まで聞く」というルールを徹底する。
    • 発表や意見交換の際には、発言者の「言葉の裏にある気持ち」に耳を傾けるよう促す。
    • 先生自身が、子どもが話している間は口を挟まず、最後まで相槌を打ちながら聞く姿勢を見せることで、模範を示す。

こうした姿勢は、子どもに「自分の話を聞いてくれる人がいる」という安心感を与え、自己肯定感を高めるだけでなく、他者への信頼感を育みます。

2. 勇気づけのボイスシャワー

これは、子ども一人ひとりの「頑張り」や「優しさ」を積極的に見つけて価値づけを行い、「教師への信頼」や「自分への信頼」を高めていく組織的な活動です。

具体的な実践例:

  • 「おもちゃランド」の取り組み: 私の勤めていた学校では、2年生が1年生をもてなすための「おもちゃランド」を企画・運営していました。(どこでも似たような取組をしていますね。)1年生が楽しんでいる姿を見て2年生は喜び、1年生は、来年また自分たちが1年生をもてなすという楽しみにつながります。これは、学年を超えた交流の中で、貢献感と達成感を育み、「Weの世界」を広げる素晴らしい実践です。
  • 「○○郵便局」の取り組み:同じく私の学校では、特別支援学級の○○学級が、○○郵便局を期間限定で取り組んでいました。全校のこどもたちにお手製のはがきを配布し、校内の友だちに書いてポストに投函します。それを○○学級の子たちが、分類→配達するのですが、それはそれはみんながつながることのできる笑顔いっぱいの素晴らしい取り組みでした。
  • 授業中だけでなく、休み時間や給食の時間に、子どもの小さな変化や良い行動(例:友達のノートをそっと直してあげた、発表は苦手だけど今日は立とうとした、など)を具体的に褒める。
  • 「〇〇さんが今日の授業で発表してくれて、先生はとても嬉しかったよ」といったように、「事実」と「感情」をセットで伝える
  • 「勇気づけのしおり」のような形で、先生同士で「〇〇さんがこんなに頑張っていた」という情報を共有し、複数の先生が同じ子どもを褒める機会を増やす。

ある中学校では、この組織的な「勇気づけ指導」を導入した結果、生徒の自己肯定感や被承認感、教師への信頼感が向上したというデータが示されています。また、生徒の感想からは「あいさつがふえた、明るくなった」「まじめにできる人が多くなった」といった具体的な変容が報告されています。これは、「個人の頑張り」を「組織の力」に変えることで、大きな成果を生み出した好例と言えるでしょう。

まとめ:子どもたちの未来のために、チームでできること

「チームとしての学校」は、個々の負担を減らし、先生方が本来やりたかった教育に専念できる環境をつくります。そして何よりも、子どもたちの「Iの世界」と「Weの世界」を広げ、自己肯定感を育む上で不可欠なアプローチです。

目の前の子どもの「よさ」を共有し合い、聞く姿勢を徹底し、勇気づけのボイスシャワーをかけ続けること。その実践の積み重ねが、子どもたちの心に光を灯し、より良い学校をつくる力になると信じています。まずは、先生方が「チーム」として、できることから始めてみませんか。

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