叱る・取り上げる前に知ってほしい3つの原則|元校長が解説
はじめに
「スマホのルールを守らない」
「約束したのに、また破った」
そんなとき、どう対応すればいいのか分からず、
感情的に叱ってしまった経験はありませんか。
スマホの問題は比較的新しいものですが、
子どもが約束を守れないとき、
親がどう関わるかという課題は、昔から変わっていません。
この記事では、教育現場での長年の経験と、
近年の家庭での実践例をもとに、
スマホの家庭ルールを破ったときの具体的な対応方法を、
家庭でそのまま使える形で解説します。
スマホの家庭ルールは「破られる前提」で考える
スマホの家庭ルールを決めたはずなのに、
気づけば約束が守られていない——。
注意すると反発され、
強く叱ると親子関係がぎくしゃくする。
「取り上げるしかないのだろうか」と悩む保護者の声を、私は何度も聞いてきました。
実は、スマホのルール違反そのものよりも、その後の対応が、
子どもの成長と親子関係を大きく左右します。
私は40年間、学校現場で子どもたちと向き合ってきました。
とくに高学年、いわゆる思春期の入り口に立つ子どもたちの指導を通して、
ある確信を持つようになりました。
叱らなければならないことは、確かにある。
しかし、それで終わらせないことこそが、教育の本質なのです。まず知っておいてほしいのは、
ルールは破られるものだという現実です。
それは、子どもが怠けているからでも、意志が弱いからでもありません。
感情の揺れが大きく、衝動性が高まる時期にあるからです。
問題は、
「破ったこと」ではなく、
「破ったあとに、どんな関わりが行われるか」です。
ルールを破ったときに、やってはいけない親の対応
感情的に強く叱る
感情に任せて叱ると、
子どもは行動の是非ではなく、
「怒られた」「責められた」という感情だけを受け取ります。
一時的に行動が止まることはあっても、
内省は育ちません。
すぐにスマホを没収する
スマホを取り上げれば、
確かに問題行動は一時的に止まるかもしれません。
しかし学校現場では、
これによって
- 本当の困りごとを隠す
- トラブルを相談しなくなる
子どもを数多く見てきました。
行動を止めることと、考える力を育てることは別です。
ただし、緊急性が高い場合は例外もある
ここで誤解してほしくないのは、
「どんな場合でも話し合いを待てばいい」と言っているわけではない、という点です。
たとえば、
- 深夜の使用が続き、睡眠が明らかに崩れている
- SNSトラブルが進行している可能性が高い
- 子ども自身が感情を制御できない状態にある
こうした緊急性が高い場合には、
一時的にスマホを預かるという判断が必要なこともあります。
ただし、その際に大切なのは、
それを「罰」にしないことです。
- 期間を決める
- 理由を説明する
- 落ち着いたら必ず話し合う
この3点を押さえれば、
取り上げる行為は
支配ではなく、安全を守るための対応になります。
元校長が実践してきた「叱ったあとの本当の勝負」
高学年の子どもたちを指導する中で、
私は次のことを大切にしてきました。
叱る必要がある場面では、簡潔に叱る。
長い説教はしません。
叱った直後には、
どうしても感情のもつれが起こります。
これは親子でも、教師と子どもでも同じです。
しかし——
クールダウンは、必ず起こります。
クールダウン後にこそ、成長のチャンスがある

感情が落ち着いた頃を見計らって、
私はよく、こんな声をかけてきました。
- 「今なら、話せそう?」
- 「さっきのことだけど、どう思う?」
ここで、答えを教えることはしません。
評価や説教もしません。
自分の言葉で振り返らせるのです。
すると子どもは、
- なぜそうしてしまったのか
- どんな気持ちだったのか
- 次はどうしたいのか
を、少しずつ言葉にし始めます。
このプロセスこそが、
メタ認知(自分を客観的に振り返る力)を育てます。
親の「願い」は、伝えていい。いや、伝えるべき

ここで、もうひとつ大切なことがあります。
それは、
親が子どもに対して持っている願いを、言葉にして伝えてよい
ということです。
私はクールダウン後、
次のような言葉を添えることがありました。
「叱りたかったわけじゃない」
「あなたには、こんなふうに育ってほしいと思っている」
「だから、あの行動が気になった」
これは説教ではありません。
期待と信頼を伝えるメッセージです。
願いが伝わったとき、
叱責は「攻撃」ではなく、
関係を守るための言葉に変わります。
「再合意」が、信頼関係と自立を育てる
振り返りと願いの共有を経てから、
初めてルールの話をします。
- 何が困ったのか
- 何を守りたいのか(睡眠・安全・学習など)
- 次はどう調整するか
ここで重要なのは、
親が答えを出さないことです。
子ども自身に考えさせ、
「これなら守れそう」という形で再合意をつくる。
この経験の積み重ねが、
子どもを
「怒られるから守る存在」から
「自分を守るために考える存在」へと成長させます。
年齢別に考える、対応のポイント
- 小学生:環境を整えるのは大人の役割
- 中学生前半:一緒に立て直す時期
- 中学生後半以降:自由と責任をセットで渡す
スマホ対応は、
成長段階に応じて変えてよいのです。
まとめ:ルール違反は、失敗ではない
スマホの家庭ルールが破られたとき、
それは「教育の失敗」ではありません。
考える力を育てるチャンスです。
- 叱るべきことは、簡潔に叱る
- 感情が落ち着くのを待つ
- 自分の言葉で振り返らせる
- 親の願いを伝える
- 再合意で立て直す
この積み重ねが、
親子の信頼関係を深め、
子どもが自分で考え、選択する力を育てていきます。
スマホは、
子どもを縛る道具ではありません。
思考と自立を育てる教材にもなり得る。
その鍵を握っているのは、
叱った「その後」の関わり方なのです。
🔗 関連記事(内部リンク)
スマホを「何歳から」「どう導入するか」については、
こちらの記事で段階的に解説しています。
→ スマホデビューは何歳が正解?後悔しない家庭ルールの作り方